コラム自然言語処理(NLP)とは何?仕組みや活用事例、今後の課題

2023.11.62023.11.6

自然言語処理(NLP)とは何?仕組みや活用事例、今後の課題

NLP対話型AI自然言語処理
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自然言語処理(NLP)とは、コンピューターが人間の言葉を理解できる技術を指します。コンピューターに「言葉」を教える分野とも言われ、コンピューターが人間の指示を正しく理解することで、業務の効率化や人材不足の解消など多くの分野で注目を集めています。そこで今回は自然言語処理の仕組み、さまざまな活用事例、そして今後の課題について徹底解説します。

1. そもそも自然言語とは?

自然言語(Natural Language)は人間が日常のコミュニケーションの中で使用する言語であり、たとえば日本語や英語、中国語、フランス語などが該当します。これらの言語は音声や文字を通じて情報や感情、自分の考えを伝えるために使用されます。自然言語の最大の特徴は「曖昧な表現」が含まれる点です。そのため、会話の中で勘違いが起きたり、「それってどういう意味?」と聞き返さなければならないシーンも発生します。

一方で、コンピューターが理解できる言語はプログラミング言語と呼ばれます。プログラミング言語はコンピューターに誤作動を起こさせないために指示を正確に伝える必要がある特性上、曖昧さが生まれないよう厳密に設計されています。

2. AIによる自然言語処理(NLP)とは何?

自然言語処理(Natural Language Processing, NLP)とは、人間が使用する自然言語(日本語や英語など)をコンピューターが理解し、処理できる技術を指します。人間が使用する自然言語には曖昧さが介在するため、自然言語の理解はコンピューターが苦手とする部分でした。そのため従来では、コンピューターに指示を出して思い通りに動かせるのは専門のプログラミング言語を扱える一部のエンジニアに限られていました。しかし、自然言語処理の進化によってコンピューターによる自然言語の理解が可能となったことで、人間が日常で使用する自然言語を使ってコンピューターに指示を出し、思い通りに動かせるようになりました。

3. 自然言語処理が注目される理由

ここでは、自然言語処理が注目される理由や背景を紹介します。

3-1 ①デジタル移行に伴うテキストデータ量の増加

近年ではスマホやパソコンの普及、メールやチャット、SNSなどのコミュニケーションツールの進化によって、ビジネスだけでなく日常生活に至るやり取りの多くが、従来の「紙ベース」から「デジタルデータベース」へと変化しました。さらにペーパーレス化によって紙ベースで保管していた文章や資料の電子化が進み、業務効率の改善やコスト削減が図られています。こうしたデジタル移行に伴い、急増するデジタルデータをいかに解析・活用するかが迫られています。

3-2 ②GPT-3やBERTなど、汎用言語モデルの技術革新

自然言語処理の進化によって、従来では不可能だった自然言語をそのまま理解し、解析できる技術である「汎用言語モデル」が開発され、「GPT-3」や「BERT」などが発表されました。これによりデジタル移行に伴って増え続けている膨大なデジタルデータを人間では到底及ばないスピードで解析し、活用できるようになると期待されています。

4. 自然言語処理の実用例

自然言語処理の技術を使ったサービスは、すでに日常生活のさまざまな場所で活用されています。ここでは自然言語処理の実用例を5個紹介します。

4-1 ①対話型AIチャットボット

対話型AIチャットボットは、「iPhoneでSiri」や「チャット形式のお問い合わせ」などで使われている技術です。自然言語処理を活用して、ユーザーが入力した文章を的確に理解し、最適な回答を返すことで対話を実現しています。特に企業の問い合わせ業務を効率化できるため、自社のホームページやアプリ内で多くの企業が採用しています。

4-2 ②音声認識AI

音声認識AIによって、コールセンターでの顧客との会話内容の記録や会議での議事録作成を自動化できます。従来の音声認識を自然言語処理がサポートすることで、独特な言い回しや業界用語などを的確に理解してより正確なテキスト変換が可能となります。

4-3 ③機械翻訳

機械翻訳では、人間が入力した文章の意味を自然言語処理によって的確に解析することで、従来よりも正確な翻訳を実現しています。

4-4 ④検索エンジン

検索エンジンにおいても、人間が入力した文章の意味を自然言語処理によって的確に解析することで、ユーザーの検索意図を正確に判断し、最適な検索結果を返すことが可能となっています。

4-5 ⑤テキストマイニングによるビッグデータ活用

テキストマイニングは、膨大なデータの中から的確に情報を取り出す技術を指します。デジタル移行に伴ってデジタルデータが増え続けている現代では、従来のデータ処理手法では管理は困難を極めつつあります。そこで自然言語処理を活用して文章の意味や意図を把握し、必要な情報だけを的確に抽出することで、テキストマイニングの精度を上げ、初心者でもデータ分析の恩恵を受けることができるようになります。

5. 自然言語処理の仕組み

人間が使用する自然言語は曖昧な表現を含んでいるため、意味を正確に理解するには複雑な解析処理が必要となります。手順としては、まず「機械可読目録」と「コーパス」を用いて準備を行い、その後「形態素解析」「構文解析」「意味解析」「文脈解析」の順番で解析を行います。

5-1 機械可読目録

機械可読目録(MAchine-Readable Catalog MARC)は、コンピューターが人間の言葉を理解する手助けとなる目録(辞書)を指します。自然言語処理を行う前段階として、コンピューターが人間の言葉を読み取るための変換を行います。

5-2 コーパス

コーパス(Corpus)は、文章の使用方法を構造化してデータベース化したものです。たとえば形容詞や動詞などの品詞の識別方法などが記載されており、コンピューターはコーパスを参考に自然言語の理解を進めて行きます。

5-3 形態素解析

形態素は文章の最小単位のことで、形態素解析は文章を最小単位に分ける作業を指します。たとえば、「私は黒いボールペンとノートを買った」という文章に形態素解析を行うと、以下になります。

原文私は黒いボールペンとノートを買った
形態素解析後  私(名詞) / は(助詞) / 黒い(形容詞) / ボールペン(名詞) / と(助詞) / ノート(名詞) / を(助詞) / 買った(動詞)

5-4 構文解析

構文解析では、単語同士の関係性を解析します。

たとえば、「私は黒いボールペンとノートを買った」という文章を形態素解析し、構文解析を行うと以下の3種類になります。

私は / 黒い / ボールペンとノート / を買った
私は / 黒いボールペン / と / ノート / を買った
私は黒いボールペンと / ノートを買った

5-5 意味解析

意味解析は構文解析した情報を使って、文章が持つ意味を解析する処理を指します。

たとえば、「私は黒いボールペンとノートを買った」という文章を形態素解析+構文解析し、意味解析を行うと以下になります。

形態素解析+構文解析意味解析
私は / 黒い / ボールペンとノート / を買った私はボールペンとノートを買った。両方とも黒色。
私は / 黒いボールペン / と / ノート / を買った私はボールペンとノートを買った。ボールペンが黒色で、ノートは不明。
私は黒いボールペンと / ノートを買った私は黒いボールペンと一緒に、ノートを買った。
この文章では、「私」と「黒いボールペン」が、「ノート」を買ったことになるので、この解釈は誤り。

上記のように一つの原文の中に複数の解釈が存在するため、最終的に最適な候補を選び出すのは非常に難易度が高い作業となります。

5-6 文脈解析

文脈解析は、文と文との繋がりを解析し、文章同士の関係性を把握します。単語でなく、文章の関係性であるため、文章の背景など複雑な情報が必要です。意味解析と比べて難易度がさらに高くなるため、今後の発展に向けて研究が進められています。

6. 自然言語処理における今後の課題

自然言語処理技術は急速に発展しており、すでにチャットボットや機械翻訳などで実用化されています。しかし、現在の技術では文章の意図を完全に把握することは難しく、実用化の範囲も限定的なものとなっています。その原因は以下のように複数存在します。

  • 自然言語に含まれる曖昧な表現を完全に排除できないため
  • 言語の多様性、ニュアンス、文脈、慣用表現などを完全に理解できないため
  • 日本語や英語などの言語構造や文化の違いを完全に把握しきれないため

こうした課題を解決すべく、コンピューターは紙媒体やインターネット上に存在する膨大な単語や文章を日々学習し、今も進化を続けています。

7. まとめ:自然言語処理の進化がもたらす未来

自然言語処理の進化により、従来コンピューターが苦手としてきた曖昧な表現を含んだ文章の解析技術が向上し、自然言語を理解できるようになりつつあります。その結果、人間とコンピューターの円滑なコミュニケーションが可能となり、業務の効率化や人材不足の解消、ビッグデータの解析や活用などが期待されています。

ただし、現在の自然言語処理技術では自然言語を完全に理解することはできず、誤解や意図しない結果を招く可能性があります。そのため、言語理解の向上や応用範囲の拡大を目指して今も日々研究が重ねられています。もし今後、コンピューターが人間の言葉を完全に理解できるようになれば、AIやロボットなどが劇的な進化を遂げ、私達の日常は今よりもずっと便利になる可能性を秘めています。

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