コラム今話題の「感情認識AI」とは?仕組みから事例まで徹底解説

2023.9.202023.9.20

今話題の「感情認識AI」とは?仕組みから事例まで徹底解説

マルチモーダルAI感情認識AI
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AI、または人工知能と聞くと「機械的」というイメージを抱く人も多いかもしれません。つまり、私たち人間が持っている喜び、悲しみなどの感情を理解できないのではないか、と考えるでしょう。

しかし、最近のAIは感情を認識するようになりました。それが「感情認識AI」です。この感情認識AIはさまざまなビジネスシーンでも使われ、今後も活用の幅が広がる予定があります。とはいえ、AIは一体どんな仕組みで感情を認識するのでしょうか。

今回は、そんな感情認識AIについて、仕組みから解説しながら実際の事例も交えて解説します。

1. 感情認識AIとは

まずは、感情認識AIとはどんな仕組みなのかについて解説します。

感情認識AIとは、名前の通り人間の感情を読み取るAIのことです。AIは、コンピュータがデータを分析し今後起こることを予測できる技術のことです。もともとAIは、ビッグデータという膨大なデータを学習しています。例えば「このデータは赤」「このデータは青」「赤は明るい」「青は暗い」などを始めとした、多くの種類の、膨大なデータを読み込んでいるのです。これによって、「次に何が起こるか」、「読み込まれたデータに対してこの事象は何が当てはまるか」などの判別をします。

これを応用して、マイクやカメラ、センサーなどから取得したデータを、AIが「これは喜び」「これは悲しみ」として判別できるようになりました。つまり、ビッグデータを活用し、あらかじめ「このデータは【悲しみ】」「このデータは【喜び】」として学習させます。そして、マイクからは音声を、カメラからは動きや画像を、センサーからは生体情報を取得し、このデータに基づいて感情を認識させる、という仕組みです。

この感情認識AIは、最近あらゆるビジネスに応用されるようになりました。それによって、今感情認識AIに注目する企業が増えているのです。

2. 感情認識AIの種類

感情認識AIには、主に「動画・写真」「文章」「声」の3種類の入力方法があります。それぞれどういうものなのか、見ていきましょう。

まず、動画や写真による感情認識AIは、カメラで取得した動画・写真から瞳孔の大きさや表情、視線、顎やえくぼ、唇の動きなどから感情を分析します。この場合は、ただ喜びや悲しみなどの感情を判断するだけでなく、特定の商品に興味を持っているかいないか、嘘をついているかいないかなどの判別も可能です。

一方、文章による感情認識AIは、自然言語処理によって分析を行っています。自然言語処理とは、私たち人間が使っている言葉について、その意味をコンピュータが処理・認識することです。例えば「私は泣いています」という言葉を出した際には、喜びで泣いているのか、悲しみで泣いているのかの判別はつきません。しかし、「試験に合格した」「恋人にプロポーズされた」など前後の文脈をつけることで、この文章は喜びで泣いていると判別ができます。これを応用して、文章で相手がどのような印象を抱いているかを分析できます。

さらに、声による感情認識AIはマイクによる音声を通して、話す言葉と声の抑揚、大きさ、震えから感情を判断します。例えば、同じ「こんにちは」でも、明るい気分のときと暗い気分のときは声のトーンが変わります。明るい気分のときは声のトーンが高く、暗い気分のときは声のトーンが低くなる傾向にあります。感情認識AIでは、このトーンを汲み取って感情を判別したり、声の震えから裏に隠れている感情を読み取ったりします。

このほかにも、脳波や脈拍などの生体情報から感情を認識するAIもあります。

3. 感情認識AIが使われている事例

では、実際に感情認識AIが使われている事例について紹介しましょう。

文章だけだと、相手の真意が見えないこともあるかもしれません。そんな際に、文章の感情認識AIでは文章の真意を汲み取れるようになります。アメリカでは、最近人材の離脱防止の一貫として「Kanjoya(カンジョーヤ)」という感情認識AIを導入する企業が増えています。このKanjoyaでは、社員アンケートに書かれた文章を通して社員が企業に対してどんな印象を持っているか、どんな不満があるか、従業員やチームは今どんな状態なのかを分析します。企業の幹部やリーダーと社員の面談を行っても、なかなか面と向かって言えない本音を、このAIが拾えるようになると、今後退職率に変化が起きるかもしれません。

また、写真・動画から感情を認識するAIも、さまざまな場面で活用されています。ここで営業職での取り組みにも、感情認識AIが使われた事例について見て行きましょう。営業職では、印象が大切です。その際に、笑顔一つで印象が変わる可能性もあります。そこで明治安田生命相互会社では、営業職員が持つ業務用スマートフォンにアプリ「心sensor for Training」を導入しました。「心sensor for Training」は感情認識AI「Affectiva」を搭載し、撮影した表情に対して「喜び」「悲しみ」などの感情を判定する「表情練習モード」、スマートフォンに向けて話をすると話している際の表情を採点してアドバイスをもらえる「表情採点モード」等が備わっています。これにより、営業職員の印象をアップさせる試みが行われています。

さらに、音声による感情認識AIをコールセンターに応用した事例もあります。コールセンターでは、もともと顧客への対応が難しい点や事務作業への効率化など、さまざまな課題を抱えています。そこでCENTRIC株式会社(東京都豊島区)では、顧客からの電話を録音し、ディープラーニングによって感情を把握することで、顧客が本当に望んでいる点の把握や配送、アフターケアなどどこに問題点があるかを探りました。

これによって、従来の商品の解約率が10%だったものが、1%台に減少することに成功しました。また、会話の内容をテキスト化することで、通話履歴への登録作業の効率化や今顧客がどのようなことを考えているのか、を把握できるようにもなっています。

4. 感情認識AIが及ぼす影響

今後、感情認識AIは精度が上がる可能性があります。現在AIが認識できる感情は「喜び」「悲しみ」など単一的な感情であることが多いですが、ここに長期的な気分の波やメンタルの様子などを記録できると、よりその人にあった活用ができるようになるかもしれません。

ただし、感情認識AIが使われるためにはまだ課題があります。それは生体情報や取得した個人情報によるプライバシーの保護や、それにともなう法律の整備などが必要なためです。この整備には、まだまだ時間がかかることが予想されます。 それでも、さらに感情認識AIが使われる幅が広がる可能性があります。例えばコミュニケーションの取り方や、自分自身を見つめ直す機会など、ビジネス以外の場面でも使われるかもしれません。また、いままで診断が難しかったうつ病やPTSDなどの心療系の診察や、おすすめの精度を上げるマーケティングなどへの応用が期待されています。それによって、感情認識AIの新たなる活用方法が見いだせるようになるでしょう。

5. まとめ

さて、今回は感情認識AIの仕組みから事例、影響について解説しました。感情認識AIとは、文章、動画、写真、声などの情報から感情を分析するAIのことを指します。実際に笑顔や真剣な表情の採点やコールセンターにおける顧客の課題分析などに使われています。

今後、感情認識AIは、これからも私たちの身近なところでさらに使われていくことは間違いありません。

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