コラム音声認識AIとは?仕組みや機能を解説
音声認識AIとは?仕組みや機能を解説
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「音声認識AI」とは、人間が話す言葉をAI認識し、そのデータを分析・活用する技術を指します。文字入力を効率化できることが音声認識AIの魅力ですが、近年ではAI技術の発展により、音声認識AIの活用範囲はさらに広がっています。
音声認識AIを議事録作成や翻訳、業務のサポートなどに活用することで、業務効率を大幅に改善することも可能です。本記事では、近年注目度が高まっている音声認識AIの仕組みや機能について、分かりやすく解説します。
音声認識AIとは
「音声認識AI」は、人間が発する言葉を分析し、テキストデータに変換する技術です。音声認識AIを活用することで、キーボード入力よりはるかに速くコンピューターにデータを入力でき、入力ミスを減らすこともできます。音声認識AIの進化により、個人や企業、日常生活やビジネスなど幅広い分野での活用ができるようになりました。
AIにより音声認識の精度が向上
音声認識技術の歴史は意外と古く、1970年代にアメリカで始まったと言われています。しかし、当時のテクノロジーでは十分な精度が出せず、家庭やビジネスで普及することはありませんでした。その後も研究が続き、2000年代以降のテクノロジーの発展や、アルゴリズム(計算方法や手順)の改善により、音声認識の精度は飛躍的に向上しました。
現在では、人間のような知能をプログラムで実現する「AI(人工知能)」も進化を続け、音声認識と組み合わせて活用されています。例えば、「Siri」や「Alexa」のようなAIアシスタントや、声でさまざまな操作ができるスマートスピーカーなどです。
音声認識AIの技術と仕組み
音声認識AIは、主に次の5つのような技術・仕組みによって実現されています。
- 音響分析
- 音響モデル
- 言語モデル
- 発音(音声)辞書
- テキスト出力
音響分析
「音響分析」は、マイクに入力された声を分析し、デジタルデータに変換する技術です。AIは人間や動物のように、音からそのまま情報を得ることはできません。音声認識AIは、声の強弱や抑揚などを解析して「特徴量(データの傾向)」を抽出することやノイズを除去することで、クリーンで活用できるデータに変換します。
音響モデル
「音響モデル」は、音響分析でデータ化した音声を分析し、言語データに変換するための技術です。例えば「こんにちは」という音声は、文字ごとに波形がまったく異なります。私たちは音を聞いた瞬間にその違いを聞き分けて、言葉の意味まで認識しています。
AIは音声の波形を分析し、母音や子音といった単位に分解し、その音に対応するアルファベットなどの記号に変換します。例えば先ほどの「こんにちは」であれば、「K-O-N-N-I-CH-I-W-A」となるでしょう。ただし、音響モデルでは音素への分解を行うだけなので、意味のあるテキストデータへの変換には後述する「言語モデル」が欠かせません。
言語モデル
「言語モデル」とは、音素を組み立てて意味のあるテキストを構成するための技術です。例えば、「今日はとても寒いです」という文章は、「今日は」「とても」「寒いです」といった単語から構成されています。AIは事前に収集した膨大なデータを活用して、解析した音声データと近似する言葉を検索し、意味のあるテキストデータに変換します。
発音(音声)辞書
前述した音響モデルと言語モデルを機能させるためには、可能性の高い言葉の候補を検索するための「データベース」が欠かせません。「発音辞書」や「音声辞書」は、「K-O-N-N-I-CH-I-W-A」という音素と一致する言葉は「こんにちは」です。しかし、発音(音声)辞書に含まれていなければ、音声認識AIはこの言葉を認識できません。
こうしたデータベースには、人間の声に関する膨大なデータを統計的に処理したデータが活用されています。音声の分析と特徴量の抽出を行い、発音辞書から候補を検索することで、音声認識は初めてテキスト化に必要な情報が得られます。
テキスト出力
ここまでのステップを経て、意味のある文章となる可能性の高いものが、テキストデータとして出力されます。音声認識AIはあくまで統計データを処理するため、アルゴリズムの精度やデータベースの質・量によって、誤った結果となることもあります。これらを改善することで、音声認識AIの精度が向上していきます。
音声認識AIの主な用途・活用事例
音声認識AIの主な用途・機能として、次の5つのようなものが挙げられます。
- 議事録の自動作成や文字起こし
- 多言語間の翻訳や通訳
- 音声による文字入力
- ボイスボットなどの音声AI
- 音声によるAIアシスタント
議事録の自動作成や文字起こし
音声認識AIは、議事録の作成や文字起こしに最適です。会議やミーティングでは、ダイナミックな会話が行われるため、正確な議事録作成には担当者の知識やスキルが求められます。会議の内容によっては、議事録作成が追い付かないことや、不正確になることもあるでしょう。
AIは分析できる範囲であれば、参加者の発言を逃さず収集・テキスト化できます。会議終了と同時に議事録が完成するため、業務の効率化にも役立ちます。業界用語や社内特有の言い回しについては、用語辞書を追加したり、繰り返すことでAIがデータを蓄積でき精度も向上します。
多言語間の翻訳や通訳
「翻訳」や「通訳」にも、音声認識AIが活用されるようになりました。例えば、近年注目度が高まっている携帯型の翻訳機は、Googleなどの検索エンジンを活用して、膨大な言語データから精度の高い翻訳・通訳を実現しています。そのため、相手の言葉を適切に理解しやすくなったうえに、地域ごとの表現の違いや訛りにも対応しやすくなりました。
音声による文字入力
音声認識AIの活用により、人間の特定の動作をAIがサポートできるようになりました。その代表例が、声によるデバイスの制御です。例えば「スマート家電」には、「つけて」「消して」など声で操作できるものが増えています。自動車の自動運転にも音声認識AIが活用されています。こうした技術は、障がい者のサポートにも応用できるでしょう。
ボイスボットなどの音声AI
AIが顧客の音声を解析して自動で回答する「ボイスボット」の普及も進んでいます。カスタマーサポートの電話対応などでボイスボットを導入すると、担当者の代わりにAIによる顧客対応が可能となります。AIで対応できない範囲を有人で処理することで、業務効率化やコスト削減につながるでしょう。
音声によるAIアシスタント
iPhoneの「Siri」やAmazonの「Alexa」など、音声認識技術を活用したAIアシスタントは、広く普及 していて、私たちの暮らしに身近な存在です 。そのほかにも、Webサイトなどでユーザーの音声入力に対して自動応答 できる「チャットボット」といった、人間と会話できる技術も普及しつつあります。
音声認識AIの課題
便利な機能を備えている音声認識AIですが、次のような課題も残されています。
- ノイズによる精度低下
- 方言やスラングを認識しづらい
- 国内での普及率が低い
ノイズによる精度低下
人間は騒音がある環境下でも、相手の声を集中的に聞き取ることができます。しかし、音声認識AIは波形データを分析して単語を抽出するため、雑音等で波形が乱れると正確な結果が得られません。ノイズキャンセリングや音声前処理技術などの活用により、ノイズ対策の強化が進められています。
方言やスラングを認識しづらい
音声認識AIは統計的なデータから言葉を推測するため、データ数が少ない方言やスラング、固有名詞などは精度が低下します。方言やスラングに対応させるためには、データベースを多様化する必要があります。例えば、サービス名称や社用語などは辞書機能等であとから追加することで、認識精度を向上させることが可能です。近年では、「機械学習」や「ディープラーニング」など、膨大なデータでAIの精度を向上させる技術が発展しており、さらなる精度向上が期待できるでしょう。
国内での普及率が低い
音声認識AIは発展を続けていますが、海外と比べて国内の普及率は低いのが現状です。個人の日常生活はもちろん、ビジネスシーンでの活用もまだ進んでいません。例えば「株式会社イード」が行った調査によると、音声アシスタントの利用経験がある人がアメリカでは85%前後、中国では90%以上ですが、日本では50%以下です。音声アシスタントを一度も利用したことがない人が半数を超えています。
AIは利用者が増えるほどデータベースも充実するため、精度が向上しやすくなります。つまり音声認識AIの発展には、利用者の増加が欠かせないということです。
音声認識AIへの期待が高まっている
人間の声を認識してテキスト化する「音声認識AI」は、個人の生活やビジネスをより豊かにしました。議事録の自動作成や文字起こし、翻訳やAIアシスタントなど、さまざまなシーンで音声認識AIが活用されています。これからますます進化する音声認識AIが私たちの生活にどのような変革をもたらすか、またその応用領域がどのように広がっていくのかに注目し、今後のさらなる発展に期待しましょう。